合宿地での展示企画-グループワークを通じて-

合宿地での展示企画-グループワークを通じて-

 

私はこの夏、全国の朝鮮学校美術部が合同で行う制作合宿に参加してきた。

行き先は淡路島。

前の合宿と部活動で知り合った他校生との再会、いつもと違う環境での制作。

私は何ヶ月も前からずっと楽しみにしていた。

しかし反面、心の隅にはあまり行きたくない気持ちもあった。

今回は”グループワーク”があるからだ。学生をいくつかのグループに分け、合宿の作品で、グループごとに展示会場をつくる。これが今回のグループワーク最終目標だ。

ギャラリーもない合宿先で展示場を作るなんて。人見知りだから初対面でグループ作業は避けたい。とはいっても、言葉には上手くできないが、何か意義は感じた。

私は腹を括り、企画にちゃんと取り組むことにした。

淡路に到着した翌朝、グループワークは本格始動した。

私のグループは 9人。学校、学年もランダムである。

私は美術部長でもあるので、グループリーダーを担当した。役割は展示に向けて会議の進行や意見のまとめ、展示準備を牽引する事だ。

初めてのグループ会議では、顔合わせから今回の展示をどうするか話し合ったが、ほぼ全員がお互い初対面で中々意見があがらない状況に焦りと不安を強く感じた。

一緒に制作を行い準備を進めていく過程で、少しずつ距離を縮める事にした。

自身の制作では、グループのメンバー4人と海へ向かった。夏合宿だし海が描きたいという気持ちで。実際には遊泳可のビーチで人が多く、私は海よりも、岩場の白い流木を描く事にした。

ジリジリと照りつける日中ではアクリル絵具はパレット上ですぐに乾いてしまう。

岩場は高くないし海も浅い所なので安全ではあるが、絵を描くには不安定だった。けれど波の音を聴きながら一人でゆっくり絵を描くのは、普段、部室で描くのと違って、心が洗われた。

2日目の制作を終えて会議では、自分たちの作品をお互い観ながら、だんだんと意見があがる様になった。ぼやけていた私達の展示イメージがはっきりしてきた。 グループでは絵の他に、スチロールや針金で立体作品を作る子がいたので、全てを活かせる展示を目指した。

3日目、展示を完成させる日。

それぞれ制作を追い上げて、みんなで展示にぴったりの場所を探した。林、ベランダ、意見が色々出て、選択肢は広がった。

けれど足場が悪かったり、作品を飾りにくかったり、展示向きで、且つ面白い場所は中々見つからない。

試行錯誤の末、私たちは宿の側の炊事場にある、丸太の骨組み小屋で展示する事にした。

自分の足で展示場所を探したのは初めてだった。

展示場を手配し、企画する先生やアーティストって大変なんだな…としみじみ思ったりもした。

林に入りクモの巣塗れになったり、前方不注意で倒れかけの竹におでこをぶつけるのは、ここ特有の経験だったが。

私たちは作品を丸太にビニール紐で吊るしたり、ベンチの上に飾ってみた。風にふかれて作品が後ろを向いてしまったり、重さに耐え切れず落ちてしまったりもしたが、それもそれでなんだか面白かった。

展示作業は夜9時を超えて終わった。

集合時間を過ぎていた為、私たちは展示の全体像も見ないまま、急いで宿に戻った。

最終日のプレゼンは、各グループ展示を全員が一斉に回って、グループリーダーによる展示解説と、メンバーによる作品解説を行う。自分たちの順番が来てようやく、展示を遠目から眺める事ができた。


暗闇の中、ライトに照らされた作品たちの影が地面に落ちる。プレゼンをしている間、私やメンバーの声と、木々の擦れ合う音、虫の鳴き声だけが響く。

淡路島の自然と自分たちの作品が融合した、五感全てが働くような、不思議な展示だった。

こうして私たちは3日間で展示を作り上げた。色んな人と話したり、新たに仲良くなれた子もいて、かけがえのない時間となった。

始めグループワーク企画を知った時と終わった後の気持ちを比べてみると、なんだろう、今までの自分は随分腰が重いみたいだ。

この「重さ」は色んな好機を取り逃す事になるだろう。

もっと軽快に自分の足を動かし、今、見えていないものを見えるようにしたい。

合宿で得たものは何か、改めて考えてみる。

通常とはちょっと違うけど自分達の目的にあった展示場所の探し方、インスタレーションの仕方、みんなで作り上げた展示と合宿の思い出。

それと、遅ばせながら少しずつではあるが、私たち朝鮮学校の美術活動は、まさに自分達が動かして行かねばならないという事を思えるようになった。

 朝鮮学校は現在、人はもう多くないし、美術部となると数は減る。しかし、だからこそ、全国の部員たちと密接に繋がり合えると私は思う。今回をスタートに、新たなものを全国の仲間たちと作り上げたい。来年の合宿には卒業生として参加する事になる。次は今回の合宿よりもっとパワーアップしたものが観られるはずだ。そんな後輩たちの活躍を思い描き楽しみにしながら、卒業まで残りの期間、制作を頑張っていきたい。

 高3 コ・ソナ